社長ブログ

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日本ホームブルワーズ協会

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昨年、日本ホームブルワーズ協会を立ちあげ会長に就任した。背中を押したのはホリエモンこと堀江貴文氏だ。堀江氏との話の中で日本では酒税法上、家庭でのお酒の醸造ができないことが、クラフトビール業界の発展に大きなマイナスになっていることを話したところ、協会でも立ちあげればどうかということになり、ならばということで昨年12月1日に協会を設立した。ホームブルワーズ協会と銘打ってはいるが、当面の活動は、日本でのホームブルーイングの解禁である。解禁ができてようやく日本にも本当のホームブルワーが生まれてくる。はずだ。

 

 私が、ホームブルーイングを解禁したいという理由は、以下のようなものだ。

 

まず前提として、イスラム教国のようにお酒そのものが宗教上の理由から全面的に禁止されている国を除いて、ほとんどの国で製造数量などの規制はあるものの自宅で自分たちが飲むお酒を造ることは合法である。お金を取って料理を提供しようとすれば、飲食免許を取得し、調理師免許を持った料理人が要るのだが、家庭で料理をすることを規制する法律はない。海外においては、お酒もこれと似たようなものだ。ところが日本では、明治のある時期から家庭での醸造は一切禁止された。日清・日露戦争当時、日本の歳入の実に30%もが、酒税収入であり、万が一この酒税を取りはぐれると、日本を近代国家に作り上げていくうえで、大きな痛手となるのは明白だった。そこで、酒税を確実に徴税するために、管理の難しい家庭醸造を全面禁止したのが実像だ。因みに現在、酒税は国の収入の1%程度だ。

 

 さて、ここから本題である。欧米と比べると日本のクラフトビール業界の成長は極端に遅い。理由はいくつかあるが、一番の理由は、日本においては個性豊かなクラフトブルワリーが次々と生まれてこないことが最大の理由である。ここまで話せばもうお分かりだろう。アメリカには110万人もの家庭醸造を趣味にする人たちがいる。そして、巷には、この人たち向けの醸造の手引書がごまんとあり、WEB上には膨大な醸造のチップスがあり、大小のホームブルワーたちの大会があり、ホームブルワー専門のモルトやホップや簡単な醸造機器を販売する店舗が多数ある。そうした、情報と原料がふんだんに手に入る環境で、アメリカのホームブルワーたちは、myビール造りをしているのである。プロの私たちから見て、彼らはなかなか手ごわい。というのは、私たちプロの人間は、常にお客様を考えてビール造りをする。それは、ビールを販売して対価を得る以上、当たり前である。しかし、ホームブルワーにとってそんなことは一切関係なく、自分が飲みたいもの、自分が作りたいもの、人に自慢できるものを純粋に追い求めていけるのである。そして、時折、とんでも無いものを作り出す。

 

 実際、世界のカリスマブルワーの大半は、ホームブルワー上がりである。考えて見れば至極あたり前のことで、プロになるまでバットでボールを打ったことが無いプロ野球選手がいるだろうか。シェフになるまで、包丁で野菜を切ったことが無い料理人がいるだろうか。日本においては、プロになるまでお酒は一切作ってはいけないのだ。これを僕はなんとかしたいのだ。

 

伊勢角屋麦酒
代表取締役社長 鈴木成宗