雪リンゴHoppedシードル
こんにちは。ブルワーの山宮です。
先週の金曜日、伊勢角屋麦酒では初となるシードルの仕込みをしました。
社長が知り合いから樹上で凍結してしまい、生食用として販売できなくなり、そのままでは廃棄せざるを得ないというリンゴの話を聞き、それなら搾汁してシードルにしよう!と決断したことに端を切りました。
そのストーリーについてはまた語られる場面があるかと思いますが、
私は伊勢角初のシードル製造にあたって、醸造サポート役として携わらせていただきまして、初めてのシードル作り、ビールと違うことがあまりにも多くて面白かったので、そのことについてお話しさせていただきたいと思います。
ビールは麦芽から麦汁を煮出して濾過し、それを発酵させますが、シードルではリンゴを絞った果汁を発酵させます。
同じ醸造酒じゃん。てな話なんですが、
麦汁とリンゴ果汁では、酵母にとって驚くほど異なる住環境なんです。
お酒を作り出す、労働者たる酵母の視点で例えながら、この住環境について説明させていただきます。
麦汁は、アミノ酸もミネラルもいっぱいあって – 必要な家電や水回りの設備は一通りある。
ただ、糖分が本当は好きなグルコースが少なくて、マルトースやデキストリンばっかり – 寮飯があまりにも健康的すぎる。
酵母は生活をしていると有機酸を出して麦汁のpHを下げようとします。でも麦汁の成分がクッションになって、ストレスを感じるレベルまではいきません。- 日々生きているとだんだんと住環境を汚していきますが、床がしっかりとワックスがけされていたり、シンクがコーティングされていたり、換気が良かったり、意外と汚れないんですよね。
反面、リンゴ果汁は、というと、
アミノ酸やミネラルが少なく – 家電、水回り共用、部屋だけみたいな感じです。
ただ、グルコース/フルクトースなど、食べやすい糖分が多くて – ご飯がおかわり自由で美味しい寮飯
リンゴ果汁はpHの緩衝材が少なく、酵母の出す有機酸ですぐにpHが下がります。非常にストレスになります。- 部屋の汚れ対策は最悪で、ワックスがけもされていないから、すぐ埃まみれになるし、ゴキブリ対策もしてないから物を散らかすと、ワサワサ。住んでいればいるほど、部屋がめちゃくちゃになって心が荒む。
あなたが酵母の立場に立った時、どちらの部屋に住みたいでしょうか?
まー、ちょっと寮飯がうまいってのは、魅力的だな〜と思う方もいるかもしれませんが、
大半の人は、麦汁に住みたいのではないでしょうか。
でも、我慢してリンゴ果汁に住んでください。ストレスで悪さをしないでください。とお願いするのが、仕込みの本当のお仕事です。
悪い住環境に酵母を置くと、仕事をバックレるし、ストレスで暴飲暴食、代謝が極悪になって、体臭が絶望的になります。
そうなってしまうと、どうもこうも美味しくない商品が出来上がってしまいますので、
「いやぁ〜、そこをなんとか。リノベーションして、部屋毎にユニットバスを付けましたから。飯はうまいんで。」
と譲歩をしながら、なんとか我慢して働いてもらう。
そういうことを主眼に、今回の仕込みを考えていました。
今回使用したリンゴ果汁はめちゃめちゃ美味しくて、
香りづけで使ったNelson Sauvinという白ワインの香りのするホップも昨年収穫の超フレッシュアロマでした。
最高の原料を使うなら、酵母にしっかりと頑張ってもらって、
不要な香りなし!
ワインのような香り高く!
テクスチャーが豊かで!
でも不要な発酵臭はなくて!
というところを狙いました。
今日で発酵5日目ですが、
実にいい感じです。
みなさま、完成をお楽しみに🐴❤️