イセカドLab 水質調整剤の香味への影響
こんにちは。新入社員の山宮です。
最近、勉強の一環として、
ブルワリー内でビールのブラインドテイスティングをしました!
そのことについて書こうかな、と思います。
(醸造に関するマニアックな話をするので、
読んでくださる方はお覚悟をお願いいたします。)
テーマは水質調整剤のビールへの香味の影響です。
以前、ビール醸造における糖化工程について解説をしました。
その中で、水質調整について紹介しています。
ビールの仕込みの一番最初にあたる糖化工程においては、
デンプンを酵母が食べられる糖まで分解します。
このとき、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼが働きやすい環境を整えることが大事です。
麦芽とお湯を混ぜてできるものをマッシュというのですが、
このマッシュのpH(酸性/アルカリ性の指標)が5.2-5.6(やや酸性)になっていることが、
非常に重要なんです。
マッシュのpHの調整にも色々なやり方がありますが、
食品グレードの水質調整剤を加えるのが最も安定性が高く、
伊勢角ではそれを採用しています。
ただ、水質調整で加えるミネラル/イオンといったものは、
ビールの味わいにも少なからず影響を与えるそうです。
水質調整の教科書を読むと、
硫酸イオンSO42-はホップの苦味をシャープにし、
塩化物イオンCl–はビールにボディを与える。
水質調整をするときは、SO42-とCl–の比率をスタイルに合わせて、
コントロールすべきだ。
ということが書いてあります。
しかし!
実際のところ、「苦味がシャープになる」ってどういうことよ?
「ボディが与えられる」ってどうなるんよ?
という疑問がありました。
この2つのイオンは伊勢角の水質調整においても、
深く関わりのあるイオンなので、
ビールのレシピを構築していく上で、
味覚と数値を結び付けて、考えられたら良いなっ
と思い、
今回、水質調整をしたビールの比較テイスティング会を企画しました。
さて、それでは、実際のテイスティングの方に話を進めます。
一番の定番であり、水質調整もニュートラルなペールエールをベースに
以下の通り3つのサンプルを作り、ランダムに配置して、
水質調整の味わいへの影響を評価しました。
① ペールエール
② ペールエール + 300ppm 硫酸カルシウム
③ ペールエール + 300ppm 塩化カルシウム
(※上の①~③とカップの1,2,3は対応していません)
硫酸イオンと塩化物イオンはそれぞれ、硫酸カルシウム、塩化カルシウムを用いて加えました。
教科書的にはカルシウムイオンは香味に影響を与えないそうです。
硫酸イオンも塩化物イオンもそれぞれ約200ppmほど増加する計算になります。
(左:硫酸カルシウム 右:塩化カルシウム)
さぁ、これでどれがどの水質調整をしたビールか、
違いがわかるかな?
というところで、工場メンバー4人でテイスティングを行いました。
結果…
4人とも、それぞれ違いは感じる、という回答でした。
硫酸イオンの影響はわかりやすく、
4人とも硫酸カルシウムを加えたサンプルは当てていました。
「苦味がシャープになる」という感覚は非常にわかりやすかったです。
一方で、塩化物イオンに関しては、
「ボディを与える」という感覚に相違があり、
2人が正解、2人が間違い。
私自身も間違えました苦笑
とまれ、これを機会に、
工場メンバー内で、硫酸イオンと塩化物イオンの香味への影響が共有できました。
水質調整のレシピをさらにブラッシュアップしていきたいですね 🙂
美味しいビールをみなさまのもとにお届けできるように
これからも精進します!
今回は完成したビールに水質調整剤を加えて、
香味への影響を調査しましたが、
CRAFT BEER BASE Brewing Lab様が、
同じレシピで、仕込み水の水質調整を変えてビールを作ってみたそうです。
面白い記事なので、こちらもどうぞ↓
https://www.jbja.jp/archives/31254?fbclid=IwAR3iSzQqO5_Kknjzv3aKME39rocBgdMwn3a9HmQk0RZvvFurS2ZhPvy3C7U