[伊勢角news] イセカドの美味しさの秘密 – ボイル編 ~なぜ伊勢角のビールは華やかなのに苦くないのか??~
こんにちは! 新入社員の山宮です!
暑くなって参りました。
最近のブルワリー内はサウナのような蒸し暑さです。
なので、
仕事あがりに飲むビールが最高に美味いです!
そういうときは、ライトでホッピー、
爽快なXPAというスタイルのビールがぴったりですね。
1年先輩、ブルワーの瀬田さんが造ったビールをご紹介いたします。
(商品ページ飛べます)
トロピカルに爽やかで、すいすい飲んでしまうビールです。
新人の身としては、
1年後にこれだけレベルの高いビールを作れるようになれたらいいな〜と、
期待に胸が膨らみます。
仕事へのモチベがますます高まるっ!
がんばります。
さて、新人目線で伊勢角のビール造りのこだわりを解説していくシリーズ、勝手にシリーズ化して続けさせていただいておりますが、第3弾になりました。
↓過去の記事↓
ビールの醸造工程を順に追っていって、
モルトミル→マッシング→…
と来て、詳しい方ならお分かりかと思いますが、本来はロイターが次に来るはず……ですが、
ロイターという行程、モルトミルとマッシングが上手くできていれば、特に問題なく進むあんまりビールの品質に影響を及ぼさない行程なので、こだわりと言って語らせていただくことがあまりないのです!笑
ま、ロイターについては、ちょっと解説させていただいて、その次の煮沸/ボイルの行程での伊勢角のこだわりを解説させていただきます!
1. ロイターとは?
2. 煮沸/ボイル
3. DMSの除去
4. ボイル中のホップ投入へのこだわり
1. ロイターとは??
まずは、ロイターについて説明させていただきます。
ロイターとは、マッシングによって生成した麦芽のエキス分を、麦芽で濾過層を作って抽出していく行程です。要するに、液体と固体がごちゃ混ぜの状態から、液体だけにするのです。
はっきり言って、??????って感じですよね? イメージするのが難しいと思います。
モルトミルで破砕した麦芽は、胚乳部分が砕かれた細かい粉と粒と麦芽の殻から成ります。
ロイターという行程では、ロイタータンと呼ばれる、穴の開いた金属板の上に、
マッシングを経た麦芽を注ぎ込んでいきます。
すると、ロイタータンの上に麦芽層が沈んでいき、ロイタータンの穴から麦汁が染み出してきます。
もちろん、麦芽をそのまま沈殿させるだけでは、密な濾過層ができず、
染み出してきたろ液に麦芽の殻が混ざってしまいます。
そこで、リサーキュレーションと呼ばれる、ろ液を再び麦芽層の上に戻すという行程を、
麦汁の抽出の前に数十分行います。そうすることで、濾過層が密になっていきます。
このリサーキュレーションを、綺麗なろ液になるのを目視で確認するまで続けます。
そして、きれいになった濾液を次の煮沸釜へ移していきます。
麦芽の殻は高温条件で渋みを出すので、ロイター行程でしっかり除去してあげることが大切です。
伊勢角は標準的なロイターリング行程を行っていると思います。
特に述べることがありません。笑
強いていうなら、
良いモルトミルで良い麦芽層ができると、
ロイターがスムーズに成りますし、
マッシングの調整によって、麦汁の粘度が変化し、
ロイター行程の時間が変わってきます。
ロイターはそれ以前の行程の影響を大きく受ける行程なので、
ロイターを見越して、それ以前の行程をコントロールしてあげることが
大切なのかもしれません…。
2. 煮沸/ボイル
ロイター行程で濾過されてきた麦汁は続いてケトルと呼ばれる釜に移されて、
煮沸行程に入ります。
単純に言えば、グツグツ煮るだけの行程なんですが、
この行程はとても重要で、ざっとあげるだけでも、
- 麦汁濃度の調整
- 麦汁中の過剰な成分を沈殿除去
- オフフレーバーの原因となるDMSの蒸散
- ホップのα酸のイソ化
など、小難しくかけば、色々役割があります。
全部説明するのは難しい、、、
というか僕自身がわかっていない部分もあるので、
伊勢角が美味しいビール作りに向けて、
焦点を当てているポイントを2つ紹介させていただきたいと思います。
3. DMSの除去
1つ目のポイントはDMSの除去です。
DMSとは何か?
先ほどチラッと書きましたが、オフフレーバーと言われる
ビールにおいて異臭とされるアロマ、フレーバーを与える化学物質で、
具体的にはキャベツやクリームコーンのような香りがします。
この香りは、世界大会で受賞するレベルであることが出荷基準である弊社において、
まずあってはならない香りです。一発で審査から弾かれてしまいます。
DMSは麦芽由来の物質から熱反応でできてしまうので、
麦汁中にはどうしても含まれる物質です。
ただ幸いなことに、グツグツ煮沸していくことで、揮発していく物質なので、
ボイル行程で臭いがしないレベルまで追い出すことが可能です。
とは言え、しっかり煮てあげないと、意外としぶとく麦汁中に残り、
嫌な臭いを発してくるものです。
伊勢角で使っているロレックの設備では、
1. ケトルの側面全体を加熱することで煮沸中の麦汁の大きな対流を作り出し、
麦汁全体からDMSを揮発させる
2. チャイナハットと呼ばれる熱々の傘がケトル上部に設置されており、
ケトルの中程から取り出した麦汁をチャイナハットにかけることで、
効率的にDMSを揮発させる
という2段構えで徹底的にDMSを除去しています。
ケトルの中↓↓↓
上から来た管から麦汁が放出されて、
それがチャイナハット(平たい円形の金属板)にあたって、
バシャバシャなっています。
これで効率的にDMSを蒸散させています。
4. ボイル中のホップ投入へのこだわり
2つ目のポイントはボイル中のホップ投入へのこだわりです。
伊勢角では、スッキリとした鮮やかな苦味のビールづくりのために、
ボイル中にホップを投入するタイミングや量について改良を重ねてきました。
最近では苦味が少なく、ホップアロマの華やかなビールがトレンドなので、
いかに苦味を抑えて香りを演出するか、というところで、
さらなる進化を遂げています。
詳細なデータは企業機密で語れませんが、1つポイントをお伝えします。
大事なポイントは、煮沸中のホップ使用量を控えることです。
煮沸終了直前など、火のかかりにくいタイミングでホップを投入します。
たくさんホップを煮ると、香りが揮発してしまう上に、
ポリフェノールという渋み物質が溶出してきます。
緑茶の健康成分としてよくうたわれているので、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
緑茶やワインのように適量のポリフェノールは味に深みを与えるのですが、
ビールにポリフェノールが多すぎると、舌がビリビリしてきて、
飲みづらくなってしまいます。たくさん飲めません。
ホップのα酸に由来する苦味というのはポリフェノールに比べて、
結構スッキリしています。
伊勢角ではポリフェノールが少なく、
α酸由来の苦味がきれいについたビール作りを目指して、
レシピ構築をしています。
なので、煮沸行程ではあまりホップを大量に入れず、
煮沸終了直前や煮沸の次の行程であるワールプール(Whirlpool)
やその先の行程で、ホップによる苦味付けや香り付けをしていきます。
先の行程についての解説はまたの機会に譲らせていただき、
今回はここまでにさせていただきます。
いかがだったでしょうか。
今回は、伊勢角のボイル/煮沸行程へのこだわりを説明させていただきました。
ここまで読んでくださった皆様、ご精読ありがとうございました。
山宮